てらまち学Vol.2 あの頃の暮らしからひも解く、てらまち を開催しました。

2019年11月から12月に、尼崎を知る、もっと楽しむための歴史文化講座「てらまち学Vol.2」を開催しました。

昨年度のVol.1に続き、今回は、てらまちプロジェクトが取り組みを進める寺町かいわいであの頃人気だったお店・懐かしい食べ物など、地域の皆さんの暮らしの思い出を教えていただきながら、寺町かいわい「らしい暮らし」について考えました。

てらまち学Vol.2のプログラム

プレイベントとして、11月10日(日)に地域の施設「サンシビック尼崎」で行われる「サンシビックまつり」に出店を行いました。来場者から寺町かいわいの場所に紐づく思い出やエピソードを集めてマッピングする、展示型調査を行いました。

第1回(11月21日)、第2回(12月10日)では、プレイベントで地域の方から伺った内容を参考にしながら、参加者一人ひとりからじっくりと「あの頃のエピソード」をヒアリング。

尼崎市立地域研究史料館の河野さんに歴史アドバイザーとしてお越しいただき、1950年代頃から現在までの寺町かいわいの写真や、当時の雑誌、新聞などの記事を紹介いただきながら、寺町かいわいに根付く暮らしの魅力について学びました。

プレイベント

あなたの思い出、聞かせてください
サンシビックまつりでの展示型マッピング調査
(2019年11月10日)

昨年度からてらまちプロジェクトも参加している「サンシビックまつり」(サンシビック尼崎で毎年11月に開催)。今年度も引き続き、てらまち学の取り組みを行いました。

今回はてらまち学Vol.2のプレイベントとして、寺町かいわいの暮らしの中での思い出を集めるため、1953年と2019年の航空写真を用いた調査展示の企画と、プロジェクトの活動紹介を実施しました。

調査展示では、「遊び」「食べ物」「場所」「イベント」「流行」の5つのテーマについて、寺町かいわいに根付く思い出をアンケート調査し、それらを地図上の位置にマッピングしていきました。

それらに用いる備品は、てらまち学Vol.1・Vol.2でもチラシを作成いただいた神崎さんにご協力をいただき、地図にピン刺ししていく質問カードや、アンケート協力を呼びかけるポスターなどを用意しました。

さらに、ただ単に質問に答えるだけでは面白くない!ということで、回答いただくご自身でオリジナルの問いにできるよう、思い出を彩る「スパイス」として、7つの言葉から一つを選んで質問カードと組み合わせるようにしました。

展示の場所が3Fの大ホール前ホワイエということもあり、ホール内のステージ発表を終えた方やその観客の方にご覧いただきました。

しかし、初めのうちはみなさん物珍しそうに地図を眺めるだけでカードの記入までは至らず…。地図を見ながら一緒にお話をするうち、「あの頃はここでな…」「そうそう!ここの辺りやったかなぁ…?」と、次第にご自身の「まちとの思い出」をお聞きすることができました。

また、サンシビック尼崎には水泳などの子ども向けスポーツ教室もあるため、老若男女が集まるということも、この施設の魅力の一つ。この日も、ステージ発表や、お友達やご家族のステージを見に、お子さんが来場されていました。

生まれるずっと前の1953年の地図と、2019年の地図とを見比べながら、「今はよく、ここで遊ぶのが好き」と、展示調査に参加してくれる姿も見られました。

気がつけば、地図にはたくさんのマッピングが。1953年の地図には35個、2019年の地図には14個のまちとの思い出が集まりました。

地域のみなさんから集めた思い出は、11月からのてらまち学Vol.2(本講座)でも共有しながら、寺町かいわい「らしい暮らし」とその魅力をひも解いていきます。

第1回

暮らしの思い出のひも解き方
(2019年11月21日)

サンシビックまつりでのプレイベントを経て、いよいよ始まった「てらまち学Vol.2」。11月21日に第1回目の講座をサンシビック尼崎で行いました。

尼崎市立地域研究史料館の河野さんに歴史アドバイザーとしてお越しいただき、「移り変わってきたもの」や「あの頃の姿を現在もとどめているもの」をご紹介いただきながら、参加者の方から地域で過ごした思い出をヒアリングしました。

まず、河野さんがお話されたのは、ご自身の「はじめての『てらまち』体験」。大学院生時代、そして史料館で勤務し始めた頃を振り返って、「てらまち」に対して抱いた感想を共有いただきました。

続いて、寺町かいわいの移りゆく姿と、あの頃の「記憶」の姿を現在もとどめているものを、当時の写真を用いて紹介いただきました。

移りゆく姿として挙げられたのは、琴秋閣や尼崎港駅、中央商店街、北城内周辺、多くの劇場が立ち並んでいた神田新道周辺、当時「3本煙突」が有名だった南部の工業地帯など…。商業で賑わう様子や、少しおめかしして出歩く紳士淑女の姿が印象的でした。

また、1958年の「町を静かにする運動」や、1973年頃まで見られていた「ロバのパン」など、人々の暮らしの様子を垣間見ることができました。

一方で、現在も変わらずあるものとしては、寺町の寺院が並ぶ風景や庄下川が挙げられました。少し意外だったのは、庄下川の橋に並ぶユリカモメたちの姿。いつ頃から彼らの姿が見られるようになったのかは、河野さんも知らないそう。気づけば辺りの暮らしに溶け込んでいたようです。

河野さんからの話題提供の後は、参加者の方から寺町かいわいとの思い出をお話いただきました。働きに出てきて、仕事終わりに立ち寄った居酒屋や、遊びに出かけた劇場・ダンスホール。お話からは、当時の賑やかな地域の様子が伝わってくるようでした。

講義の最後には、今後さらに地域に興味を持ってくれる人が増えれば、と、河野さんから歴史や文化をたどる・調べる方法をレクチャーいただきました。

寺町・開明町かいわいからも近くに立地する地域研究史料館の利用方法に加え、オンライン上で閲覧できる史料の数々についてもご紹介いただきました。また、昔を知る家族や友人への聞き取りの方法や、コツについても学ぶことができました。

第2回

てらまち「らしい暮らし」を今に活かす
(2019年12月10日)

12月10日、サンシビック尼崎で第2回目の講座を開催しました。

引き続き、尼崎市立地域研究史料館の河野さんに歴史アドバイザーを勤めていただき、特に「暮らしや文化にまつわる歴史」をレクチャーいただきました。プレイベントで用いた1953年と2019年の地図とを見比べながら、参加者の方から寺町かいわいで経験したエピソードを教えていただきました。

まず始めに、河野さんによる歴史レクチャー。第1回の内容を振り返りつつ、江戸時代から現在に到るまでの寺町かいわいの文化や暮らし、まちの風景の移り変わりについてさらに詳しくお話いただきました。

江戸時代の寺町には16か寺の寺院があったそう(現在は11か寺)。さまざまな宗派が集まるエリアですが、「五ヶ寺組(四ヶ寺組)」を構成し、宗派を越えて相互で風紀取締りや監視を行うよう、尼崎藩から支配を受けていたそうです。

また、お寺の中の暮らしに注目してみると、本興寺には全国から多くの学僧が集っており、特に種子島からの出身者が多かったようです。

明治・大正・昭和戦前になると、寺町の町並みは変わらぬものの、広徳寺から発行されていた絵はがきや、本興寺門前で催されていた植木市など、まちの暮らしが伝わる史料が残っており、写真を交えて紹介いただきました。

また、寺町かいわいでは、貴布禰神社の祭礼「砂持ち」があり、チャップリンのような仮装をして厚下駄を履いている人の様子や、ユニークなまちの一面が見られました。中馬病院を建てた中馬氏が院長を務めた「琴浦育児院」があったということも教えていただきました。

昭和に入る頃には、現在の国道2号線に多くのトラックが走る様子や、川に浮かぶカキ船が見られたそうです。

戦後・平成になると、寺町の変わらぬ町並みの中で、子供たちが遊ぶ様子も記録に残っていました。大覚寺の節分祭は現在も負けてはいませんが、当時は肩が挙げられないほどの人混みだったそう。寺町の周辺では、煙突が立ち並ぶ様子はすでに見られていたようです。

また、阪神尼崎駅周辺も現在とは少し様子が異なっていました。現在のような高い建物は多くなく、駅前は広場があったそう。運送会社があったためか、郵便物を送るために駅に訪れる人もいたそうです。

時代が進むにつれ、まちの賑やかな様子や暮らしは史料にも多く残されており、商店街や劇場の写真や、「ほっとなニュース」という記事も紹介いただきました。

河野さんの歴史レクチャーの後には、参加者のみなさんで意見交換を行いました。レクチャーの中で紹介があった場所を知っているという方や、当時はそこで働いていたという方もいらっしゃり、「実はね…」という裏話も聞くことができました。

特に盛り上がったのは、小中学校時代のエピソード。当時流行っていた遊びや、出かけた場所などのお話を、楽しそうに共有している姿が印象的でした。

てらまち学Vol.2を振り返って

てらまち学Vol.2では、地域のたくさんの方からお話を聞くことで、史料からは見えない、暮らしの些細な部分にある魅力を知ることができました。

参加者の方からは、「当時を思い出しながら、懐かしい気持ちになれた。」「貴重な意見・思い出話がたくさん聞けてとても良かった。」「これからも生涯、勉強。地域のことを知ることができて満足。」といった声をいただきました。ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました。

てらまち学Vol.2はこれで終了となりますが、講座の中で地域のみなさんから伺った寺町かいわいの暮らしの思い出は、来年度、てらまちプロジェクトの企画の種として大切に活かしていきます。寺町かいわいを訪れる人に「暮らしの魅力を伝えるきっかけづくり」を進めていきますので、引き続きぜひご注目ください!